この仕事をしていると、保護者の方によく「子供にどうやって接したらいいですか」と聞かれます。「勉強しなさい」ってどれくらい言った方がいいんですか、と。
以前、こちらの記事に書いたことがありますが→「高校受験における中学生と親の関わり方について」
改めて、私の思う理想的な声掛けの仕方を共有してみたいと思います。
声掛けの仕方
叱るのは良くない
まず、私の考えとしては「勉強に関して、親が子どもを叱ることは無意味です」とお伝えしています。それでその日は勉強したとしても、長い目で見るとマイナスの面が大きくなりやすいので、できるだけ避けた方がよいかな、という感覚です。
したがって、冒頭の「『勉強しなさい』はどれくらい言ったらいいか」というご質問に対して、基本的なスタンスとしては「できれば、ほとんど言わない方が良いのでは」というのが私の答えです。
仮に、子どもをきつく叱って机に向かわせることができたとして、机に向かっている子どもの頭の中はどうなっているでしょうか。勉強そのものよりも、「なんであんな言い方されなきゃいけないんだろう」といった不満でいっぱいになってしまうかもしれません。
子どもは機械ではありませんから、「とにかく長時間、机に向かっていれば成績が伸びる」というものではありません。
ではどう声を掛ければいいのか
子どもが勉強していない時間に、何をしているのかを一緒に見てみましょう。
スマホやゲームに時間を使っている場合には、「使ってもいい時間帯」を家族で話し合って決めておくのがおすすめです。
もし、スマホやゲームの時間が自分でもコントロールしづらそうな様子であれば、物理的に距離を置かせる(親が預かる・リビングに置いておくなど)工夫も一つの手です。
ご家庭の雰囲気にもよりますが、子どもの前で、子どもの参考書や問題集を親御さんが読んでみせるのもいいかもしれません。「こんな問題解くんだね、すごいね」と話題にしてみるイメージです。あるいは、単語テストを出したり、音読に付き合ったりと、「一緒に関わる」形にしてみるのも良いと思います。
そして、少しでも机に向かったときには、「お、やってるね」「さっきからずっと頑張ってるね」と、できるだけポジティブな声掛けをしてあげると、子どもにとっての「勉強=怒られる時間」ではなく「勉強=認めてもらえる時間」に変わっていきます。
いずれにせよ、「前向きな声掛け」や「クスッと笑えるような軽い声掛け」が難しいと感じるときは、あえて何も言わないで見守るのも一つの選択肢です。
なぜネガティブな声掛けがNGであるのか
ネガティブな声掛けでは成績が上がらないから
成績が伸びるときは、やはり本人が前向きに・主体的に取り組んでいることが多いです。いやいや机に向かっているだけだと、「とりあえずやった」という形だけの勉強になり、内容が頭に残りにくくなります。
「多少のプレッシャーがあった方が動ける」というタイプの子もいますが、基本的には、プラスの感情で取り組めるようにした方が、長期戦である受験には向いているように感じます。
子どもの自己肯定感が損なわれやすいから
勉強する・しないにかかわらず、家庭は「安心していられる場所」であることが、とても大切だと思います。
「勉強していなくて責められる・叱られる」という状態が続くと、子どもはどうしても自分に自信を持ちにくくなります。逆に、「成績と関係なく、家は安心できる場所だ」と感じられている方が、結果的には勉強面も伸びやすい印象があります。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、他者からの期待が、その人のパフォーマンスや能力を向上させる心理的効果です。
「なんで勉強しないの」ではなくて、「勉強したらすごい成績になりそうだよね」と、期待感をもって声掛けをしてあげましょう。
成績についても同じで、仮に模試や過去問の結果が思わしくないときでも、「どうしよう」「このままじゃマズいよね」といった不安を、親御さんがそのまま口にしてしまうのは、できれば避けた方がよいかなと思います。
代わりに、「この単元は前よりできるようになってきたね」「ここから伸びそうだね」と、少しでも前進しているポイントを一緒に見つけてあげると、子どもも「まだやれるかもしれない」と感じやすくなります。もし、そういった声掛けがどうしても難しいときには、あえて何も言わない、という選択肢も大いにアリです。
まとめ
基本的には、「親が直接、子どもの成績そのものを上げることは、実はあまり多くない」と考えておくと、少し気が楽になるかもしれません。
まじめな親御さんほど、「自分にもっとできることがあるのでは」と考えて、一生懸命に関わろうとした結果、つい厳しい言葉が増えてしまい、かえって関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。
受験期の親の役割は、どちらかというと「周辺的なサポート」が中心だと捉えていただくのが良いと思います。具体的には、できる範囲で、食事・睡眠・学習環境などを整えてあげること。そして、親御さんご自身が過度なストレスを抱え込まないことです。大人のストレスは、どうしても子どもに伝わってしまいます。
完璧を目指す必要はまったくありません。「できるときに、できることを、できる範囲で」。そのくらいの気持ちで、子どもの受験を一緒に乗り切っていただけたらと思います。

コメント