日本の大数学者・岡潔先生の『春宵十話』を読み返していると、教育に関するお話の中で、「競争意識をあおるのは害あって益のないものであろう。」と書かれていました。
出典:岡潔. 春宵十話 (角川ソフィア文庫) (p. 93)
思えば、大手の集団塾では、大抵の教師が生徒の競争心を煽ることに腐心しているように思います。私の勤めていたところでも、数学科の一番偉い先生が生徒同士に競争させることをしきりに推奨していました。
しかし、私の経験上、周りを気にして勉強するような子は爆発的には学力は伸びないと思っています。また、周りと比べてしか自分の成長を測れないようでは、将来不幸になりやすいとも思います。
教師のまずすべきことは、生徒の静かな好奇心を温め、内から勉強の意欲を燃やさせることであるはずです。そのためには、科目の内容がいかに面白い内容であるかを伝える教師側の力量が大事であると思っています。どの科目でもそうですが、その科目自体に興味を持っている生徒が一番爆発的に伸びていきます。
また、人と比べるのではなく、過去の自分と比べて自分自身の成長を見つめることによって、自分との向き合い方を知ることも、中学生という年代に学ぶべきことだと思っています。
もちろん、このやり方がなかなかうまくはまらない生徒も中にはいます。その場合、周りと競わせることも選択肢の一つにあっても良いと思いますが、初手からどの生徒にも周りと競争させるのが最善であるとは私は思いません。
特に女子の教育に関して言えば、競争よりも協調的環境にいる方が成績が伸びやすいという研究を複数読んだことがあります。岡潔先生も、女子大で長らく教鞭を執られていましたから、特に女子の教育を意識して上述のようなことをおっしゃっていたのかもしれません。
私が勤めていた大手塾では、数学科教師は口を揃えて「女子は数学が苦手」と言っていました。それは女子のせいではなくて、教える側の教え方や、集団塾という競争を煽る設計になっている環境のせいかもしれません。
いずれにせよ、教師たるもの自分の物差しを生徒に当てはめるのではなく、生徒をよく観察してその子にとって最善の接し方を常に模索し続けるべきであると私は思っています。

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