首都圏の難関高校受験に向けて、早稲田アカデミーかSAPIX中学部かで悩まれる方は少なくないと思います。安定的に最難関高校に合格者を出している集団塾は早稲アカ・SAPIXの2塾であり、この2塾だけが、各校舎単位で最難関高校合格のノウハウを持っていると言えます。
近年、合格者数では早稲アカの一人勝ちになっていますが、在籍生徒数に対する最難関(早慶・国立)高校合格者の割合でいえば、まだまだSAPIXの方が上回っている状態です。
私は双方の数学のテキストを全て解いていますので、その視点から情報提供をしてみようと思います。今回の記事では主に数学について取り上げていますが、他科目についても類推が効く内容が多いと思います。
使っているテキストの概要
早稲アカは一般的な塾用教材と自社作成教材を併用、SAPIXは自社作成教材のみという違いがあります。どちらも自社作成教材の評判は非常に高いです。
早稲アカ



早稲アカは、外部の業者が作成した一般的な塾用教材(新中学問題集・シリウス)と、自社作成の教材(上位校への数学)を組み合わせて使用しています。自社作成の上位校への数学は、中 2のT(上位)クラスや、中3で使用するテキストです。
本来であれば全て自社作成した方が望ましいのでしょうが、労力と効果のバランスをとって、低学年については外部教材も使用しているということなのだと思います。

中3は志望校別のオプションコースがあります。例えば後期はそれぞれのテキストが13章構成になっており、毎回の授業で1章ずつ進める形になっています。
このうち必勝難関校突破対策テキストの中身は、実は上位校への数学Regularと構成・問題の数値ともに全く同じです。ただし、各章末に追加練習用の問題が加えられています。また、難関校突破のもう1つ下の「私立実力錬成コース」のテキストは、外部の会社が作成した教材の表紙を変えたものかと思われます。
このように、制作コストを抑えているように見える部分もありながら、全体的には良いバランスで作られているように思います。
SAPIX

SAPIXは、全学年を通して全テキストが自社作成教材となっています。理想の教育への強いこだわりがこめられています。中身はかなり難しく、多くの生徒は掲載されている問題のうち半分も解かないで卒業していくというレベル感です。
MAIN SAPIX
毎週の授業のベースです。毎週1冊配られます。1冊は30ページ前後で、宿題もこの中から出されます。
repeat&Repeat
中1・中2で使用する家庭学習用の教材です。重要事項を繰り返し学習し、定着を図るものです。
Basic Exercises
中3のXクラス(下位クラス)でのみ用いる教材です。入試の基礎問題を繰り返し解いて、定着を図るものです。
また上記の他に、中 2や中3から入塾した生徒がSAPIXの進度に追いつくための「Digest Series」という教材もあります。
SAPIXは「SS特訓」という名前で、中3後期に志望校別コースを開講しています。こちらは平常授業と同じく、全クラス毎週1冊のオリジナルテキストが配られる形式です。
テキストのレベル感
早稲アカ
上位校への数学は、Regular→Standard→Advance→Finalの順に難しくなっていきます。どのクラスも全て解くわけではありません(クラスによりどれかを抜かしたりしますし、扱う時期が異なったりします)。
Regular〜Advanceは、単元別に知識を入れていくような内容になっています。Advanceは私立・国立の中堅・難関高を受けるならどの学校にも必要になる基礎知識が載っているイメージです。早稲アカ生はどのクラスでもAdvanceは扱います。
Finalは、得た知識をもとに応用問題を解く練習をする教材です。Finalの中でさらにAdvancedとSpecialのページに分かれていて、Advancedはマーチレベル、Specialは早慶レベルという印象です。
- マーチレベルを狙う受験生であれば、中3の9・10月にAdvanceを終えたあと過去問演習
- 早慶以上を狙う受験生であれば、中3の夏期にAdvance、9・10月にFinalを終えたあと過去問演習
という流れです。
また、中3後期の日曜日の志望校別コースのうち、 例えば早慶向けの「必勝早慶高突破対策テキスト」の難易度としては、上位校への数学Finalと同等です。(Finalの方は分野横断的な問題が積極的に採用されている一方、必勝の方は各分野の必要な知識のピースを埋めていくための問題が採用されています)
SAPIX
Basic Exercisesは、マーチレベルまでの学校を受験する生徒が取り組むレベル感です。
MAIN SAPIXは、問題ごとに5段階の難易度表記(⭐️1〜⭐️5)がついています。⭐️1や⭐️2はその単元の基礎問題。⭐️3はマーチ上位レベル。⭐️4は早慶上位レベル。⭐️5は開成筑駒上位レベルです。
Xクラス(主にマーチレベルまでを目指すクラス)では⭐️1〜3、Y・Zクラス(主に早慶以上を目指すクラス)では⭐️4までを主に扱います。
(中3後期の志望校別「SS特訓」のテキストの⭐️の付け方は、ターゲット層の違いにより、テキストごとに基準が違います)
難易度比較
難易度的には以下のように対応しています。
| SAPIX | 早稲アカ |
|---|---|
| 中2のMAIN SAPIX⭐️1、⭐️2 | 上位校への数学REGULAR, STANDARD |
| Basic Exercises MAIN SAPIX⭐️1、⭐️2 | 上位校への数学ADVANCE |
| MAIN SAPIX⭐️3、⭐️4 | 上位校への数学FINAL |
| MAIN SAPIX⭐️5 | 該当なし |
SAPIXのテキストはかなり難しいです。中3のMAIN SAPIXには解説がついていないこともあり、やはり最上位層の生徒に特化している印象を受けます。
クラスごとのカリキュラムの違い
早稲アカ
クラスごとにカリキュラム・進度が全く違います。それゆえ、クラスが昇降した時の生徒の負担や環境の変化が大きいです。
ですから、早稲アカはSAPIXよりも保護者・生徒ともにクラスの昇降に対して神経質な傾向が強いと思います。
SAPIX
全クラス共通のカリキュラムに沿って進みます。クラスが昇降してもシームレスな授業です。
ただその分、どうしても下位クラスの生徒は進みが速すぎる授業についていけないといった事態に陥りやすいです。
また、カリキュラムは同じでも、クラスによって先生が違うことは多いです。
網羅性
早稲アカ
早稲アカのテキストは、入試問題と戦う基礎体力・基礎知識をつけるための教材というニュアンスが強いです。上位校への数学FINALまで含めても、それだけでは不足する部分があります。日曜日の必勝志望校別コースや過去問演習からも知識を得ていく前提の作りになっています。
SAPIX
テキストだけで入試問題を全パターン網羅しているといっても過言ではないです。それだけ細かくいろいろな単元について深く掘り下げられています。そのため、中3後期のSS特訓では、知識を得るというよりは応用問題で応用力をつけることを意図しています。
なお、テキストに入試問題の全パターンが網羅されていると書きましたが、テキストに載っていることと、生徒がそれを習得できることは全く別の問題です。
どちらの塾に通うにせよ、しっかり身につけていくためには、生徒自身が復習習慣を身につけて繰り返し解いていく必要があります。
テキストの設計思想の違い
ここまでに書いた内容から、早稲アカとSAPIXではテキストの設計思想がそもそも異なるように感じられます。
- SAPIXはテキストの内容だけであらゆる知識を得た上で、過去問を解いて知識の使い方・問題の解き方を確認していく。
- 早稲アカはテキストから最低限の知識を得た上で、過去問を解くことで細かな知識を補充しつつ問題の解き方を確認していく。
どちらが優れていると断じることは難しいですが、どちらを選んだにせよ、その特性を分かった上で学習を進めるのは良いことかなと思います。
テキストの管理のしやすさ
早稲アカ
通年分がまとまっているので管理しやすいです。整理整頓が苦手な生徒にとっては大きなメリットです。それでも、全科目合わせるとそれなりの量にはなります。
SAPIX
毎週1冊×3科目(or5科目)テキストが配られますし、季節講習や日曜日のSS特訓でも毎回テキストが配られますので、全て合わせるととてつもない量になります。下の学年のものも全て一覧できる状態で保管しようとすると、本棚で埋め尽くされた専用の1部屋が必要なレベルです。
テキストの管理のしやすさは復習のしやすさに直結します。復習主義を謳っているSAPIXなのに、復習のハードルが高いのはなんとも…というところがあります。
ただ全てのテキストが1つの単元を扱っていますので、きちんと整理できるのであれば、どのテキストに何が載っているかわかりやすいというメリットがあります。
解説の有無
どちらの塾も解説がないテキストが多く、生徒がついていけなくなってしまう大きな要因になっていると思います。自主的に講師に質問に行ける性格の子は良いのですが、質問に行けずに消化不良のまま中途半端な理解度で進んでいってしまう生徒も多いです。
早稲アカ
上位校への数学は、Regularしか解説が載っていません。(Standard〜Finalには講師用の解説が存在しますが、生徒には配られません)
SAPIX
中3のMAIN SAPIXには解説が全くついていません。他の多くのテキストも解説がついていません。
まとめにかえて
ここまで早稲アカとSAPIXの教材の比較をしてきましたが、どちらも一長一短あると思いますので、どちらが優れているかというより、校舎の雰囲気も見たうえで生徒本人に合うのはどちらかという視点で選んでいただくと良いのではないかと思います。
残念ながら、いずれの塾も大量の難しすぎる課題についていけず消化不良を起こしてしまう生徒も多いです。そうなってしまった場合、そのまま同じことを続けても状況が好転することはありません。
「集団塾ではなかなか成績が上がらずに困っている」、「集団塾は向いていないのではないか」という方は、ぜひ柔軟なカリキュラムでの難関高校受験に強みを持つコリス個別指導塾をご検討ください。

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